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Serie del Caribe 2005

 カリビアン・シリーズ 2005

 カリビアンシリーズ総括

今回は2月1日から7日まで行われたカリブ海の野球の祭典カリビアンシリーズについて総括を述べさせていただく。最初にことわりを入れるが、大会のスコア、ロースター、ハイライト動画はカリビアンシリーズ公式サイト(http://www.seriedelcaribe.com.mx/)やMLBの公式サイト(「Events」→「Winter Leagues」)から各自でチェックしてもらうこととして、ここでは大会全般を通じたまとめを書くこととする。

カリビアンシリーズとはカリブプロ野球連盟に所属するプエルトリコ、ドミニカ共和国、メキシコ、ベネズエラの4カ国のウィンターリーグの覇者が(実際は補強選手が入るが)その国の代表となってナショナルチームとして戦が集まって行われ、6日間で4チームの総当り2回戦を行いカリブNo.1の座を決定する。かつてはキューバやパナマが参加していたこともあったが、(キューバ革命以降)から現在の4ヶ国で争われ、今年はマサトラン・ベナードス(メキシコ)、マヤゲス・インディオス(プエルトリコ)、シバオ・アギラス(ドミニカ)、アラグア・ティグレス(ベネズエラ)の4チームが代表として集まった。

今年のカリビアンシリーズは2月1日からメキシコの太平洋岸の観光港町マサトランにあるテオドロ・マリスカル球場で行われた。同じ期間中にマサトランの街自体もかなり盛大なお祭りが開かれ街全体でカリビアンシリーズを盛り上げた。

まず開催を前にハプニングは起こった。ドミニカチームが開幕初日に予定されている試合に間に合わないという事態が起きた。これについて少し説明すると、今年は各国のウィンターリーグプレーオフが大熱戦だった。プエルトリコを除く3カ国はプレーオフ最終戦までいき、プエルトリコもラスト1個前の試合までいった。そのため国内リーグ終了からカリビアンシリーズまでの期間があまり無く、おまけに今回は太平洋岸で開催されるとあってプエルトリコ、ドミニカ、ベネズエラは長時間の移動など忙しいスケジュールとなった。そういうこともあってドミニカチームは開催に間に合うようにメキシコに到着できなかったわけだが、遅れた原因としては表向きは飛行機のオーバーブッキングだとメディアでは発表されている。しかしながら本当のところは単に準備不足だっただけのようである。プレーオフが終了したのが1月30日。 開幕まで中一日しかなかったが優勝決定後に補強選手の出場確認、ビザの取得などを行っていたため、時間に遅れたというのが実情のようだ。また本来大会開幕の72時間前に参加メンバーの提出を行わなければならないはずがこれもドミニカチームは行っていなかった。

没収試合による敗戦も考えられたが、対戦相手のプエルトリコのマヤゲスのオーナーがドミニカ人だったことと大会本部側がドミニカチームに対して強い態度を示さなかったことにより最悪の事態は回避された。というのもドミニカチームは現役のメジャーリーガーを多く含んでおり、カリブ野球連盟がドミニカに今回制裁を加えることでドミニカ側が来年以降メジャーリーガーをチームに入れないようなことになると興行的にも盛り上がりに欠ける事態になることも予想され、今回の事態は助ける方向でしか接することができなかった。しかしこの問題は現地では少しアンタッチャブルなことのようで、ドミニカのだらしなさを批判した記事が非常に少なく上記事情もプエルトリコ人記者のコラムで書かれていただけであった。簡単に言うと、連盟側は良質のメジャーリーガーを毎回送り込んでくれるドミニカには頭が上がらないというのが現地関係者の暗黙の了解であろう。 しかしこういったことが今後許されるわけもなく、スケジュールなど大会運営に一考の余地のあるところである。ちなみにキャンセルされた初戦はプレーオフとして予定していた7日目の午前11時に試合が行われることになった。

その後は無事に大会は進んでいったが5日目が雨のため中止になった。その結果、仰天なスケジュールが組まれ6日目に5日目の分も含めて全部で4試合が行われることとなった。一日延期するという決断をせずに高校野球並みの一日4試合(各チーム2試合)ということをせざるを得なかったのはこういう理由が絡んでいる。MLBとカリブプロ野球連盟との協定の中で「カリビアンシリーズはいかなる理由があっても2月7日までに終了すること。」という条項があるためである。2月7日はドミニカ対プエルトリコの対戦とプレーオフが行われる場合はプレーオフが予定されており、6日目(2月6日)にどうしても残り試合を消化しなければならなかったからである。これも先ほどのことと似たような問題を抱えており、カリブプロ野球連盟はMLBに対しても絶対服従であり喧嘩は売れないのが実情だからだ。

さて野球のまとめに移ろう。カリビアンシリーズの結果は5勝1敗でメキシコが優勝した。プエルトリコを除く3チームは最終日まで優勝の可能性がありシリーズの盛り上がりとしてもかなり高かった。ここで各チームの総評を述べる。

優勝したメキシコは投手陣の層の厚さが目立った大会だった。MVPに選ばれたフランシスコ・カンポス(Francisco Campos)は2試合に登板して2勝、16イニングで自責点2、奪三振22の成績をあげた。またメキシコリーグの最多勝ホルヘ・カンピージョ(Jorge Campillo)はプエルトリコ戦で8回を完封し勝利。また元々投手力の良かったチームに補強選手としてエルビエル・ドゥラッソ(Erubiel Durazo)とビニシオ・カスティージャ(Vinicio Castilla)の2人のメジャー選手が入り攻撃力がアップしたのと共に精神的な核ができたのが大きかったようだ。メキシコが大会を通じて逆転されたのはベネズエラ戦のアレックス・カブレラに超特大のHRを打たれたときのみであり、そういう意味ではシリーズ全般で非常に安定していたといえるだろう。

優勝候補のドミニカは遅れて到着してすぐのベネズエラ戦に負けたのが痛かった。日程的にもきつかったので選手のコンディションも万全ではなかったことが予想されるが、しかし今年は例年に比べるとデビッド・オルティス(David Ortiz)、トニー・バティスタ(Tony Batista)がいなかったことで比較的小粒であり、相手の投手に与える威圧感も少なかったのではないだろうか。また今大会でも連打やソロホームランの得点のシーンは多かったが、粘り強い勝負強さのようなものは感じられなかった。ドミニカ人の性格的なものもあるだろうが、集中するととんでもない力を発揮するがやる気のないときには本当にドミニカかと疑うくらいおとなしいのが特徴と言えよう。ちなみにミゲール・テハーダ(Miguel Tejada)はカリビアンシリーズに参加するのは今年が最後と公言しているが、これもファンは納得してくれなさそうであり来年も普通にプレーしてそうだ。

ベネズエラは何といってもミゲール・カブレラ(Miguel Cabrera)の突然の不参加が痛かった。これは所属先のフロリダ・マーリンズから許可がもらえなかったためである。ベネズエラリーグのリーグ戦からプレーオフまでずっと参加し、しかも高打率を記録して絶好調だっただけになんとかカリビアンシリーズでも見たかったところだ(ちなみに去年は参加している)。とはいえ、ミゲール・カブレラは日米野球からずっと野球づめであり、マーリンズが心配するのも理解はできる。また、同じくプレーオフまでプレーしていたボブ・アブレウ(Bob Abreu)、K−RODことフランシスコ・ロドリゲス(Francisco Rodriguez)あたりもカリビアンシリーズに参加できなかったのは残念だ。結果的に攻撃面でアレックス・カブレラ一人に負担がかかり、それがシリーズ通しての不調の原因だったのかもしれない。しかしカブレラのメキシコ戦での逆転HRはこの大会の最大の見せ場であった。ベネズエラは1989年から優勝が無いが次回のホスト国であり次こそメジャーリーガーを入れてドリームチームで望んでくることが予想される。

プエルトリコはタレント不足が不調の原因であろう。メジャー選手が所属するチームは国内プレーオフで負けてしまいプレーオフを制覇したのは名将マコ・オリベラス率いるマヤゲス・インディアンスだった。それも投手力で勝ってきたチームであり、プエルトリコ国内リーグはこの投手陣でもなんとか持ちこたえたがカリビアンシリーズでは通用しなかったということだろう。おまけに補強選手もピークをとうに過ぎたオマール・オリベラスが選ばれるなど適切な補強になっておらずチーム力の差がもろに出た。今大会4連敗したところでカリビアンシリーズ12連敗という新記録を作ってしまったわけだが、今後は選手の個々の実力アップとメジャーのレギュラー級の選手が一人か二人は入れて望みたいところだろう。

メキシコが優勝した鍵としては次のようなことが挙げられる。補強選手として入ったドゥラッソ、カスティージャ、ルイス・アジャーラ(Luis Ayala)などのメジャー選手が効果的に働いた。移動による選手のコンディションを心配する必要が無かった。ホスト国のため各日ナイターで試合が組まれており地元の熱い声援を受けた。他のチームが不安が多かった分何の問題も無かったメキシコが順調に優勝したということだろう。しかしそれを差し引いてもカブレラに一発打たれたところ以外は完全に全試合自分たちのペースで試合を進めておりそういう意味では圧倒的に強かったといえる。

最後にまとめを述べさせてもらうが、今大会を通じてカリビアンシリーズ終了後にESPNスパニッシュなどのラテンアメリカのメディアに書かれた論調は一貫して次のようなものが多かった。「メキシコとベネズエラの台頭」である。ここ数年まではカリブ海のプロ野球は(ここではキューバはちょっと別の問題としておいておくが)、ドミニカとプエルトリコが引っ張ってきた。しかし今カリビアンシリーズではプエルトリコが通算12連敗を喫し、ドミニカがメキシコに2連敗した。これは少し前の常識だと考えられないことであり、メキシコとベネズエラのパフォーマンスが関係者メディアや与えた影響はかなりセンセーショナルなものであった。特にメキシコの二人の投手、カンポスとカンピージョはまだメジャー経験の無い投手であるにもかかわらず完璧なピッチングを披露したのには、まだここには隠れた好素材が眠っているポテンシャルを感じさせた。実際この大会中にカンピージョはシアトル・マリナーズからスプリングキャンプへの参加を招待され、もしかすると近い将来メジャーで彼の雄姿を見ることができるかもしれない。

私の感想を少し。今回の大会で何が私が一番ビックリしたかっていうと観客の多さだ。どうやら内野席のチケットは大会の1ヶ月半以上も前の12月中旬に完売していたらしい。実際MLBサイトでハイライト映像を見てもブリーチャーまでかなり人が入っているのがわかり、そういう盛り上がりから察すると、メキシコの今大会にかける意気込みがかなり高かったようである。しかし12月というとまだ地元チームのマサトランが代表になるかどうかもわからない時期になぜそんなに売れたのかが私は良く分かっていない。あえて理由を探すなら普段見ることができないカリブのスター選手が太平洋岸にやってくることへの期待だろう。皮肉なことだがカリビアンシリーズには実はカリブ海から離れたところにも大きなマーケットがあったということだろうか。

参考までに。カリビアンシリーズの各選手へのギャラは約5000ドルらしい。テハーダほどの何億も稼ぐ選手がたかだか5000ドルのために参加するかと思えば、A、AAの選手にとってはたった1週間で5000ドルも貰えるのはある意味名誉なことだろう。そういう選手たちが一緒になって一つのチームで自国のユニフォームで戦う姿は、国の名誉のためであり更に一番大きな理由としは選手がそれだけ野球が好きだということだろう。

 (この記事は、メールマガジン・Baseball Monthlyに記載されたものです。)